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「2022年度版」
フルデンチャー(総義歯)をデジタル製作する、たった5つのステップ

フルデンチャーをデジタル製作するステップをご紹介します。

  • 普段、歯科技工所様や歯科医院様とお話をさせていただくと、
    「最近、デンチャーを製作できる技工士スタッフが減ってきた。」
    「デンチャーを依頼できるラボが少なくて困っている。」
    といったお悩みの声をよく聞きます。
    その悩みは、フルデンチャーをデジタル製作に移行することで解決できるかもしれません。

  • この記事では、フルデンチャーを3DプリンターやCADソフトウェアを使用して、デジタル製作するステップをシンプルにわかりやすくお伝えします。
    こちらのステップを理解することで、フルデンチャー製作をデジタルに移行するイメージがわき、実際の検討に役立てていただければと思います。
    フルデンチャーをデジタル製作に移行することで、①材料コストの削減、②廃棄ゴミの削減、③労働環境の向上、といったメリットを享受することが可能です。

    この記事でフルデンチャーデジタル製作のイメージをご理解いただき、是非、実際のデジタル化への足がかりとしてください。

  • ステップ①:3Dスキャンでデータを生成

    ステップ①:3Dスキャンでデータを生成

    まずは、印象をデジタルデータとして準備します。印象のデジタルデータを採取する方法としては、2つの方法があります。

    ①口腔内スキャン
    ②石膏模型をデスクトップ型スキャナーでデジタル化

    ここでは、口腔内スキャン(無圧印象)と従来の石膏模型(加圧印象)の違いを理解しておく必要があります。フルデンチャーの場合、歯肉の形状を印象として採取するため、加圧印象をベースにすることが基本です。
    このため、現状では加圧印象から石膏模型を作成し、デスクトップ型スキャナでスキャンをする方法を推奨しています。
    なお、印象を直接スキャンできる歯科用3Dスキャナーも販売されています。

  • ステップ②:CADデザイン・設計

    ステップ②:CADデザイン・設計

    ステップ①で採取した印象データを、歯科用CADデザインソフトウェアで取り込み、実際のデンチャー設計を進めていきます。使用できる歯科用CADソフトは幾つかありますが、ここでは世界的にシェアが高く汎用性も良い「exocad」を元に説明をします。
    まず、exocad基本ソフトに、別売の有償モジュール「フルデンチャーモジュール」を導入する必要があります。こちらのモジュールを起動後、ステップ①で採取した印象データをインポートします。
    印象データは白黒のSTLフォーマットによるデータや、カラーのPLYフォーマットのデータが利用可能です。データのインポートが完了すると、画面上に模型が表示されます。こちらの模型上で、歯牙の配列や、床の部分のデザインを進めていきます。
    exocadであれば、大まかな設計はソフト側で提案してくれるので、オペレーターは画面上で模型を上下左右に移動させながら、かみ合わせ等を確認しつつ調整を行っていくだけで、短時間でフルデンチャーの設計を完了させることができます。
    設計が完了したら、3Dプリントするためのデータをエクスポート(出力)となります。それぞれ床の部分と歯牙の部分をSTLフォーマットで2つに分けて出力してください。

  • ステップ③:3Dプリントでデータを造形

    ステップ③:3Dプリントでデータを造形

    ステップ②でエクスポートしたSTLデータを3Dプリンターで積層していきます。
    なお、歯牙の部分と床の部分は患者様の口腔内に入れるものになるため、薬事承認がおりた3Dプリンター樹脂を使用することが必須です。

    ここでは、海外ではすでに臨床実績が長くあり、2021年に日本国内でも薬事認証がおりたドイツDETAX社製の「フリープリントデンチャー」及び「フリープリントテンプ」を使用していきます。使用する3Dプリンターは、できるだけ精度の高いモデルを推奨しています。理由は、最終調整の時間が最小化でき、強度も担保できるからです。例えば、Asiga社の3Dプリンターであれば、各種センサーが一層一層の重合を確認しながら積層を進めていくため、積層の失敗がなく、強度も確保できます。

  • ステップ④:洗浄・光重合

    ステップ④:洗浄・光重合

    フルデンチャー製作において、実は最も重要と言っても過言ではないプロセスが洗浄と光重合です。
    3Dプリンター樹脂の「生体親和性」を確保するため、しっかりと洗浄を行い、乾燥工程を経て、光重合を行います。
    ここでは3つの工程についてそれぞれ注意する点を記載します。

  • A. 洗浄工程
    積層が終わった直後の床や歯牙は3Dプリンター樹脂でベタベタです。まずはこれを高濃度のアルコール(IPA)で洗浄していきます。洗浄は、超音波洗浄機の使用を強く推奨しています。
    超音波洗浄機も、メガネ用の安価なものから、工業用の高価なものまで各種販売されていますが、ここはあまりケチらず、強力な洗浄機を使用してください。
    洗浄力が弱いと未重合の樹脂がとりきれずに光重合工程で硬化してしまうと、精度も落ちてしまいます。洗浄が済んだら、水で軽く洗いをした後にエアーを当てて余分な水滴を飛ばします。

    B. 乾燥工程
    洗浄が終わった床や歯牙を、乾燥機に入れて乾燥させます。この乾燥工程は面倒がらず行うことが肝要です。
    フリープリントでは、約40度で30分程度乾燥させます。見た目は変わりませんが、乾燥工程で樹脂の内部の水分もしっかりと蒸発し、完成時の強度がグッと上がります。

  • C. 光重合工程
    そして最も重要なのが光重合です。生体親和性を担保するため、必ず窒素充填式など完全重合できる光重合機をご利用ください。
    3Dプリンターをご利用いただいた方はご存知かと思いますが、通常の光重合器だと、どれだけ光重合を当てても、表面が少しベタついたり、しっとりしていないでしょうか。これは「未重合層」と呼ばれるものです。

    実は空気中の酸素は、光重合を妨げる性質を持ちます。このため、普通の光重合だけでは、表面の重合が完全には進まず、終わった後も少し未重合層が残ってしまうのです。
    一般的な歯科模型などの積層であればこれでも問題ありませんが、口腔内に入れる場合は、これら未重合層が唾液で溶け出し、いやな苦味や匂いの元になります。もちろん身体にもよくありません。

    このため、表面を完全に重合させるため、ここでは窒素充填式の光重合器を推奨しています。これらの重合機は、光を照射する前に窒素をチャンバー内に充填します。
    そうすると、チャンバー内の酸素が追い出され、完全な「酸欠状態」になります。この状態で光を照射することで、完全重合を得られるわけです。

  • ステップ⑤:最終工程

    ステップ⑤:最終工程

    光重合を終えた床と歯牙部分を、歯科用接着剤で固定します。このあと、研磨や表面硬化剤などを施します。
    以上でフルデンチャーの完成です。

    いかがだったでしょうか。3Dプリンターでのフルデンチャー製作は、器械と材料さえ揃えられればすぐに始められます。
    また別のコラム記事で、フルデンチャーのデジタル製作のメリット等についても詳しく記述したいと思います。

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